ふと通勤の途中にオドメーターを見ると、
数字の「2」が3つ並んでいる。
十の位は「1」
あと、10㎞ちょっとでゾロ目だ。
俺は基本オドメーターのキリ番とゾロ目をSNSにアップしたいタイプの人間だ。
なぜなら何の取り柄もない俺のような人間が
てらいなくアップできる数少ないネタだからだ。
これを見た大概のバイク乗りは「イイネ」をしてくれる。
もちろん俺が他の人のアップを見た時も確実に「イイネ」をする。
「おー、知らない間に、こんなに走ったのか」
「今でも大事にこのバイクに乗り続けているんだな」
「これからもずっと乗り続けておくれ」とか、
そういう様々な感情がその画像から沸いてくる事もあって、こちらも頑張って走ろうという気持ちもあるが、ほとんどは条件反射的に黙って「イイネ」ボタンを押す。
ツーリングでピースサインをだされた時のように、暗黙のコミュニケーションとして、そう反射的に。
ただ、もしSNSがなかったらキリ番やゾロ目の写真を撮るかというとそれはNOだ。
理由は簡単で、今に近い状態で誰もそれを見れないからで、
やはり、「今」という時と同時に「複数」と言うのが魅力的なのであって、
たとえば、一緒に走っている仲間に「おい、ちょっと見てくれ」ってメーターをみせて、
仲間が「おー!」って言う感覚をネット上で多くの人と共有したいから、アップするんだろうと思う。
そんな訳でなんとか写真を撮りたいのだが…
会社に着くまでにゾロ目になるだろうか、
メーターをチラチラみながら、進んで行く。
フィニッシュはドンドン近づいてくる。
もう間もなくというところ、俺は恐ろしい事に気がついた。
この後かなり長いトンネルがある。
もしトンネル内でゾロ目になったら撮影は不可能だ。
涙を呑んで只々メーターの回転を見送るしかない、
絶好の機会を見送り、次はキリ番の3万㎞まで寡黙に走り続けるしかないのか。
トンネルに突入!
いつもの数倍の早さでメーターが回っているように感じる。
頭のどこかで撮れなかった時の言い訳を考え始める。
もうダメかと思った時、
出口が見えた。
白い部分の数字が0から1、
そして…
うわぁ!
抜けた!
急いで左に寄って、撮影。
まさにぎりぎりで間に合った。
フー、
これが撮りたかった画像だが、
よく見ると6つの数字が,
笑ってる…
「ふっ、ふっ、ふっ、ふっ、ふっ、ふっ」