ホンダスーパーカブ 世界戦略車の誕生と展開 読書感想・レビュー

この「ホンダスーパーカブ 世界戦略車の誕生と展開」は1997年に初版を発行し、その後4回の資料・内容の増補改訂版の刊行を経て、

2018年にスーパーカブ60周年記念版として再編集された三樹書房の本です。


ホンダスーパーカブ―世界戦略車の誕生と展開

ページを開くとまるでスーパーカブのフルカラー図鑑のように写真が1ページ1車種、15ページ、歴史的スーパーカブを解説とスペックと供にビジュアルで楽しめます。

(16ページ目だけは海外生産カブ5種を1ページ展開)

本文はスーパーカブを様々な角度(全8章)から解説されてます。

実際に開発に関わった方の記事や直接のインタビュー、本田技研工業の社史など、実にバラエティに富んでます。

 

第1章 スーパーカブの歩み

開発担当者で、のちにモータージャーナリストとして活躍された中村良夫氏のご遺稿から始まります。

国内の内部事情と客観的なグローバルな視点からスーパーカブの位置づけを語られています。

自転車やモペッドとの比較などもとても解りやすく、平易な文章で楽しく読めます。

 

第2章 ホンダの躍進とスーパーカブ

ホンダの歴史とスーパーカブの歴史、ホンダの社史がそのまま載っています。

創業時からドリーム号やカブF型の開発、T.Tレース出場、

スーパーカブ発表、アメリカ進出、ヨーロッパ、アジア展開、国内販売戦略など。

断片だった知識が時系列でスッキリ整理できます。

そして、なにより会社とカブの躍進展開にワクワクします。

*海外展開については、こちらの記事で紹介させて頂いたスーパーカブは、なぜ売れる (単行本)も面白いです。

 

第3章 開発者の証言

車体設計とデザインの開発秘話。

車体設計課長としてスーパーカブの開発に携わった原田義郎氏へのインタビュー。

ネーミングの由来やスタイルやボディーカラーの秘密など、思わず人に話したくなる話がいっぱいです。

もうおひとかたはデザインを担当された木村譲三郎氏。

各モータサイクルの特徴とタイヤサイズの話と合わせて、

スーパーカブの17インチサイズの絶妙な優位性の解説は秀逸です。

「手の内に入るものを作れ」「使い勝手のいいものにせよ」

本田社長のこの言葉を具現化する為の取り組み経緯が多くの図と供に紙面上に展開していきます。

 

第4章 単気筒エンジンの開発史

そして、いよいよエンジンです。

本田技研工業が編集した記事で、こちらもかなり詳しく書かれてます。

白いタンクに赤いエンジンのカブ号F型、旧陸軍の無線機の発電用小型エンジンを改良して、

自転車用補助エンジン(2サイクル)として制作したのがスタート。

OHVの水平エンジンの開発、4サイクルへのこだわり、横型・10°上向きの意味、遠心クラッチ、

そしてOHCへ、耐久テスト、問題点、改善策が派生モデル展開と合わせて話しは進みます。

ここで再び豪華なカラーページ。

国内外のスーパーカブの当時のカタログ・ポスター・パンフレット等の写真に加え

オプション部品や工場、歴代の車両等が32ページに渡って掲載。

これだけでも貴重な資料です。

 

第5章 カブ・シリーズストーリー

1952年から2008年までのC型系の派生モデルを著名ジャーナリストの小関和夫氏が検証されてます。

自転車用エンジンのF型から始まり、C100はもちろんトレイル、CT110、モンキー、ゴリラ、EZ-9,ダックス、モトラ、ベンリィなどなど…

見開き、左が文章、右が個別3車種の解説のページ構成。

ちょっとしたカブ系辞典ですね。(数えたら64車種載ってました)

CT110モンキーは以前所有してたので特に興味深かったです。

ちなみにスーパーカブの上級車種C125はC100をモチーフに制作されているんですよね。

 

第6章 世界のスーパーカブの変遷(日本と海外)

この章はさらに細かくスーパーカブの改良や仕様変更のスーパーカブについて、

未発表の関係資料、生産年度やフレームナンバーの記録をもとに、

海外向けや現地生産モデルも含めて小関和夫氏がとても詳しく解説されてます。

(例えばC100にセルモーターを付けたのがC102で翌年にでたCD105は55㏄のセル付きで

Dはデラックスの意味とか)

 

第7章 ホンダとの50年(1947~1997)

偉大な創業者の意思を引き継ぎ、ホンダを世界的企業へと躍進させた河島喜好氏へのインタビュー記事。

開発当初の話から様々なエピソード、経営者時代の時代背景、考え方など、とても興味深いです。

 

第8章 スーパーカブの新たなる世代

2008年当時の資料編

新エンジンの特徴やカブシリーズの世界生産拠点、生産実績の表などが載ってます。

 

以上簡単にまとめさせて頂きましたが、

この本を読んで、

60年の歴史あるスーパーカブは、そのままホンダの歴史や、日本のオートバイ史、さらには人々の生活史にまで深く関わっているモノで(自分の記憶の中にも原風景としてそれはあり)それだけに深く興味の尽きない乗り物である事を再認識いたしました。

スーパーカブに興味のある方には是非読んで頂きたい1冊です。

ホンダスーパーカブ―世界戦略車の誕生と展開

 

三樹書房さんのホームページによると、

2018年刊行の「生誕60周年記念版」は品切れとなり、

現在は、内容はそのままでカバーデザインを一新した普及版を刊行しているようです。

 

カブの本のまとめ記事:

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