2018年11月に開催されたカフェカブ青山に行った時に、チラシが配られていて気になっていた本が、同年12月に発売になったので早速読んでみました。
スーパーカブは、なぜ売れる (単行本) 中部博 著
2017年世界生産累計一億台を突破し、2018年に生誕60周年を迎えたスーパーカブの本です。
内容的には、世界戦略車として開発されたスーパーカブが、どう世界へ挑み、仕掛け、変化し、受け入れられていったかが、徹底した取材をもとに各国別に詳しく書かれています。
序盤の開発に関わる部分は、戦後の日本の状況の中での試行錯誤、今や伝説となったカブ神話を再度確認する意味でも興味深いです。2スト全盛時での4ストへの執念、17インチのタイヤサイズへのこだわり、デザインの秘密など、当たり前でなかった事を当たり前にした慧眼に感服しました。
「大ヒット商品になるべく企画開発された」スーパーカブの海外展開はアメリカからスタートします。
小粋なイラストなどで今までのバイクのダークなイメージをかえた「ナイセスト・ピープル」キャンペーンが大成功したのは有名ですが、それではなぜ、ホンダは最初にアメリカを選んだのか、アメリカにはどのような潜在需要があったのか、そして、その潜在需要はスーパーカブをどう変化させて、マーケットを創出したのか。
ここから出てきた派生モデルの話は、自分がこのタイプのカブが好きという事もあって、とても面白かったです。あえて車種名は書きませんが、ヒントは「スーパーカブの販売網はオートバイ専門店以外にフィッシング・ショップやハンティング・ショップへも広がった」です。もう、わかりますよね(笑)読んでるとワクワクします。
アメリカの次はヨーロッパです。世界最大の二輪市場、ヨーロッパの強固な保護貿易主義、旧態然とした階級社会に対して、どのような戦略で臨み、展開しっていったのか、経済史的な側面からも勉強になりました。
そして、海外進出の第3弾が、満を持しての、東南アジアです。
最初の拠点をタイにおいた経緯や、難航した潜在需要の掘り起こし、タイカブ(ドリーム・ウェイブ)の登場とその発展、そしてあのプレミアムカブC125の記述もあって、とても興味深いです。
スーパーカブ発売の翌年に既に輸入販売していたマレーシア、「スーパーカブ・パラダイス」のベトナム、インドネシアも独自の事情とともに国別で紹介されていきます。
特にベトナムというと自分は「水曜どうでしょう」で見た道路いっぱいに溢れるように走るカブのイメージが強かったのですが、先日ベトナムに行った知人の写真を見せてもらったら、思ったほどカブは走っていなくて、代わりにスクーターが沢山写っていたのに驚いたのですが、その推移や現実についてもしっかり記述されていてスッキリしました。
南米のブラジルでは「オリジナルのスーパーカブ開発計画」が生まれ「ブラジル人のための」スーパーカブを作ったり(ちょっと欲しくなりました 笑 )ペールーでは、アルゼンチンではと、まるでツーリングのように各国をまわっていきます。
そして、中国。超巨大市場であり、世界のスーパーカブの工場、であると同時に、いわゆる「カブ・タイプ」のモデルを生産するメーカーも多数存在するこの国が世界にどう影響を与えているか、興味は尽きません。
日本では「生活の道具」「働くバイク」として日本の原風景に溶け込んでいるスーパーカブですが、世界各国ではそれぞれ独自の進化を遂げており、そのグローバルな歴史的変遷と現状が、著者の長期に渡る取材と鋭い見識によって展開されていて、スーパーカブの新しい魅力を感じる事が出来ました。
便利で、丈夫な実用車なのに、乗っているだけで楽しいスーパーカブ、世界の様々な国の場面で乗られ、改めて生誕60周年、生産累計一億台という、その数字の凄さを認識すると、毎日通勤で乗っている自分のカブプロにも、ちょっとグローバルな気分でまたがりたくなります(笑)
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