ソバも元気だ おっかさん…
このコピーで始る広告をご存じですか?
1960年の雑誌に掲載されたスーパーカブ、伝説の広告です。
本田宗一郎氏がスーパーカブを「蕎麦屋さんの出前持ちに最適なオートバイ」と言っていたのを受けて、
新聞や二輪専門誌以外の媒体にも展開していった、当時としては実にユニークなシリーズの第一段として登場したモノなんです。
蕎麦の修行に来ている息子が、故郷の母親に近況報告のハガキを出し、母親が、それを手に持って読んでいるという設定になってます。
写っている店員さんも、実際に新潟から修行に来た本物の方を起用されてるそうなんですよ。
一般週刊誌においてのオートバイ広告としても初めて掲載された貴重なもので、この広告がきっかけとなって、全国のお蕎麦屋さんにスーパーカブが普及し「働くカブ」のイメージが広がり、愛用者を増やしていたんだそうです。
その撮影場所が、東京の高級住宅街、田園調布で現在もバリバリ営業されている、お蕎麦屋の「兵隊家」さんなんですね。
そちらで、カブ乗りの方が集まるミーティングがあるというので、参加させて頂きました。
閑静な住宅街の中にある伝統の佇まい、ほど良いお蕎麦の香りに包まれてます。
木目基調の落ち着いた店内には、地元の上品なお客様で賑わってました。
ミーティングは奥のスペースをお借りしての開催です。
まずは、お蕎麦を頂かないと、という事で自分は「天ぷらの定食」の「蕎麦付き」を注文。
大きな海老にからっと揚がったサクサクの衣、しっかりと存在感のある蕎麦の旨み、ボリュームもあって、大満足です。
息子さんも良いお店で修行されましたね、お母さん(笑)
食事の後は、参加された皆さんが持ち寄ったスーパーカブに関連したグッズを見せて頂きました。
まずは、アメリカで一世を風靡した「ナイセスト・ピープル・キャンペーン」のイメージデザインの付いたノベルティグッズ。
1960年代の国内のホンダの販売店でも、ナイセストピープルのイラストの看板やポスターが使われていたらしいので、多分その当時のモノでしょうか。すごいコレクションです。
こちらはスーパーカブ以外のモノも入ってますが、ホンダのロゴのエンブレムコレクション。貴重なお宝ですね。
初代スーパーカブのデザインを担当された、木村譲三郎氏の直筆のサイン入りC100のイラスト。同氏の開発時のデザインの解説は「ホンダスーパーカブ世界戦略車の誕生と展開」で読んだ事があり、とても面白かったです。それにしても達筆ですね。
そして、最後は、こちらのお蕎麦屋さんの前で撮影された、スーパーカブ伝説の広告が、実際に掲載されている雑誌です。
実はこの記事の冒頭の写真はこの雑誌を開いて撮影したモノなんです。
広告の写真自体は今やネットや関連書籍で簡単にみる事ができますが、
実際に掲載された雑誌となると、これはもう、博物館の所蔵レベルの品ではないかと思います。
現在所有されている方も大変なご苦労をされて、やっと手に入れた貴重な一冊だそうです。頭が下がります。
さて、お店にも広告の写真があるというので、店内が落ち着くのをみはからって、見せて頂きました。
広告を手掛けた東京グラフィックデザイナーズさんより感謝の気持ちとして贈られたモノだそうです。
実は「兵隊家」さんは、スーパーカブ誕生50周年を記念したアニバサリーモデルのカタログでも再び登場してるんですね。50年の月日を経て再び戻って来たという、しかし、最初の広告がいかに凄かったかがわかります。
そして、お店の軒下には、
出前仕様にカスタムされた、最新のスーパーカブ・プロが配置され、出動待機状態でした。
まさに伝説は伝統となって今に生きているという感じがします。
本当に、良いモノ、貴重なモノを沢山観せて頂きました。
ありがとうございました。
参考資料「スーパーカブの軌跡」三樹書房