「大塚康生画集・ルパン三世と車と機関車と」読書感想・レビュー

自分はルパン三世のアニメが大好きです。

鮮烈な記憶として「TV第1シリーズ」があります。

子供向けのアニメとは一線を画した、

イキで大人志向の作品で、

演出や音楽が、まるで外国映画のようで斬新でした。

特にインパクトがあったのが、

出てくる武器や車が全て実在のモノ。

ルパンがワルサーP38を放ち、

ベンツSSKで疾走し、

次元のコンバットマグナムが炸裂し、

不二子のハーレーWLAが走る。

かっこいいですよね。

この作画監督をされたのが、大塚康生氏です。

フィアット500が疾走するアニメ映画「ルパン三世 カリオストロの城」の作画監督でも有名なアニメ界の重鎮です。

その方の絵をもっと観たくて、

大塚康生画集「ルパン三世」と車と機関車と を購入しました。

大塚康生画集 「ルパン三世」と車と機関車と

本書は、

1・「ルパン三世」とメカニック

2・ミリタリービークル

3・モデラー大塚康生

4・機関車少年 大塚康生

以上の4部構成になっています。

まずは、

1・「ルパン三世」とメカニック

ルパンに出てくる乗り物のカラーイラスト他、

TV第1シリーズとカリオストロの城の設定画など。

ルパンの愛車「ベンツSSK」の設定、

ルパン三世にはクルマが沢山出てくるという事で、

クルマの描き方についてもイラストで解説されているのが、

クルマの絵を描きたいと思っている自分としては、とても参考になります。

カリオストロの城の設定では、フィアット500はもちろん、

クラリスのシトロエン2CV

一見地味な銭形警部のブルーバードのパトカー、

突撃隊の輸送車CMPトラックなども載ってます。

ルパンの愛車についてのコラム(なぜベンツSSKからフィアット500になったのか)や、

*ちなみに、このベンツSSKにフェラーリの12気筒エンジンを載せた設定だったそうです。

初代TVシリーズ監督の、おおすみ正秋氏の寄稿文、大塚氏との出会いや日本のアニメ創生期の話も、とても面白いです。

2・ミリタリービークル

「16歳の車の画帖」と「ジープ」など

終戦直後からの進駐軍のジープや輸送車両、

そこから、特殊車両、4輪、ジープのスケッチの数々、

緻密で迫力のある絵は、歴史資料としても価値がありそうです。

ジープマニアとしても有名な方という事で、デフォルメされたユニークなイラストスケッチや、ジープのイラストもカラーで多数載ってます。

3・モデラー大塚康生

おたくが生まれる以前の模型おたく」と書かれていますが、

そのレベルは半端なくて、模型の企画、開発、デザイン指導などもされていたんですね。

タミヤのミニ四駆のデフォルメカラーイラストの数々。

株式会社タミヤ田宮俊作社長からの寄稿文も載っています。

マックス模型という「幻のメーカー」のデフォルメキット。

このキットの組み立て説明書のイラストが、自分的に、どストライクです(笑)

4・機関車少年 大塚康生

同氏の原点と綴られている、機関車のスケッチ類。

精密なメカとしての蒸気機関車に魅了された、

少年の日々が、正確なスケッチとともに載ってます。

とても小学生が描いたとは思えないほどの、正確さと密度の濃さに圧倒されてしまいます。

この画集は2020年7月の大塚氏の米寿のお祝いに併せての刊行という事で、

多くのゆかりの方のイラスト入りお祝いメッセージも掲載されています。

ルパンアニメの一部分でしか存じ上げなかった自分ですが、

大切な蔵書の一冊として、末永く楽しませて頂きたいと思います。

追記:2021年3月15日 大塚康夫氏が永眠されました。
こころより、ご冥福をお祈り申し上げます。